猫の肥大型心筋症(HCM)とは?症状・治療法を獣医師が解説

Jun 28,2025

猫の肥大型心筋症(HCM)ってどんな病気?答えは、猫の心臓病の中で最も多い深刻な病気です。特にメインクーンやラグドールなどの猫種で多く見られ、7匹に1匹が発症する可能性があるんです。私が診察した多くの飼い主さんも最初は「うちの子に限って...」と驚かれますが、実は無症状のケースが多いからこそ怖い病気。左心室の壁が異常に厚くなることで、血液をうまく送り出せなくなり、最悪の場合、突然死につながることもあります。でも安心してください!早期発見と適切な治療で、愛猫と長く幸せに暮らすことは十分可能です。この記事では、あなたが知っておくべきHCMの症状・原因・治療法を、私の臨床経験を交えてわかりやすく解説します。

E.g. :犬が突然家でおしっこする12の理由と対処法【獣医師解説】

猫の肥大型心筋症(HCM)ってどんな病気?

心臓の仕組みとHCMの関係

私たち人間と同じように、猫の心臓も4つの部屋に分かれています。上部に左右の心房、下部に左右の心室があります。左心室は全身に血液を送り出すポンプの役割をしているので、筋肉の壁が特に厚くなっています。

でも、この左心室の壁が異常に厚くなりすぎると大変なことになります。HCM(肥大型心筋症)という病気で、心臓の内側の空間が狭くなって、血液を十分にため込めなくなってしまうんです。7匹に1匹の猫がこの病気にかかる可能性があると言われていますが、多くの場合、症状が現れません。

HCMが引き起こす問題

左心室がうまく働かなくなると、体に十分な酸素を送れなくなります。すると心臓は「もっと頑張らなきゃ!」と速く動き始め、心筋細胞が死んでしまうことも。これがHCMの怖いところです。

「猫の心臓病ってそんなに多いの?」と思ったあなた。実はHCMは猫の心臓病の中で最も一般的な病気なんです。特に特定の猫種では遺伝的にかかりやすい傾向があります。

HCMの原因は何?

猫の肥大型心筋症(HCM)とは?症状・治療法を獣医師が解説 Photos provided by pixabay

遺伝的要因

メインクーンやラグドールなどの猫種では、A31Pという遺伝子の変異が関係しています。この遺伝子は心筋の健康を保つ働きがあるので、異常があると心臓の機能が低下してしまうんです。

HCMにかかりやすい猫種 リスク度
メインクーン ★★★★★
ラグドール ★★★★
ペルシャ ★★★

他の病気が原因になることも

甲状腺機能亢進症や腎臓病など、心臓以外の病気がHCMを引き起こす場合もあります。高血圧になると心臓に負担がかかり、左心室の壁が厚くなってしまうんです。

「うちの猫は純血種じゃないから大丈夫?」と思った方。雑種猫でもHCMになる可能性はありますよ。特にシニア猫や他の病気を持っている場合は注意が必要です。

HCMの症状を見逃さないで

初期に見られるサイン

食欲が落ちたり、遊んでいてすぐ疲れるようになったら要注意。心雑音や不整脈もよく見られる症状です。最も危険な合併症は血栓で、後ろ足が冷たくなったり歩けなくなったりします。

うちの知り合いの猫は、ある日突然後ろ足が動かなくなり、病院でHCMと診断されました。血栓ができていたんです。早期発見が本当に大切ですね。

猫の肥大型心筋症(HCM)とは?症状・治療法を獣医師が解説 Photos provided by pixabay

遺伝的要因

呼吸が苦しそう、お腹が膨らむ、歯茎が青白いなどが見られたら、すぐに動物病院へ。最悪の場合、突然死することもある怖い病気です。

HCMの診断方法

基本的な検査

獣医師はまず聴診器で心音をチェックします。血液検査やレントゲンも行いますが、最も確実な診断方法は心臓の超音波検査(エコー)です。

専門的な検査

心電図検査や血圧測定も重要な情報になります。特に高齢猫やリスクの高い猫種の場合は、定期的な検査がおすすめです。

HCMの治療法

猫の肥大型心筋症(HCM)とは?症状・治療法を獣医師が解説 Photos provided by pixabay

遺伝的要因

血液をサラサラにする薬、利尿剤、心臓の負担を減らす薬など、症状に合わせて様々な薬が使われます。うちの患者さんで効果的だったのはピモベンダンという薬で、心臓のポンプ機能を改善してくれます。

「薬って一生飲み続けないといけないの?」と心配になるかもしれません。残念ながらHCMは完治しない病気なので、症状に応じて長期的な治療が必要になります。

緊急時の処置

重度の場合は酸素療法や肺にたまった水を抜く処置が必要になることも。ストレスは大敵なので、落ち着いた環境づくりが大切です。

HCMとどう向き合うか

自宅でのケア

静かな場所を作ってあげる、食事は高たんぱくでおいしいものを与える、オメガ3脂肪酸を補給するなど、日常生活の工夫でQOL(生活の質)を上げられます。

私のおすすめは、窓の近くに猫がくつろげる場所を作ってあげること。外を眺めるのは猫にとって最高のストレス解消になりますよ!

定期的な健康チェック

無症状の時期を長く保つためにも、半年に1回は健康診断を受けましょう。特に7歳以上の猫は要注意です。

HCMを予防するには

繁殖時の配慮

ブリーダーさんはA31P遺伝子の検査をして、病気の遺伝を防ぐ努力をしています。子猫を迎える際は、親猫の健康状態を確認しましょう。

普段からできること

バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの少ない環境が何よりの予防法です。あなたの愛猫が長生きできるよう、今日からできることを始めませんか?

「もう手遅れかな...」と諦めないで。適切な治療とケアで、HCMの猫でも幸せな日々を送ることは十分可能です。私もたくさんの症例を見てきましたが、愛情あふれる飼い主さんと出会えた猫は、驚くほど元気を取り戻すんですよ。

猫のHCMと人間の心臓病の意外な共通点

実は似ている症状と治療法

猫のHCMと人間の肥大型心筋症、実は驚くほど似ているんです。どちらも左心室の壁が厚くなる病気で、息切れや動悸といった症状が現れます。

治療法も共通点が多く、人間用の心臓薬を猫に使うケースも少なくありません。例えば、β遮断薬やカルシウム拮抗薬などが効果的です。ただし、絶対に人間の薬をそのまま与えてはいけません。必ず獣医師の指示に従ってくださいね。

診断方法の進化

最近では、人間の医療で使われている最新技術が動物病院にも導入されています。3DエコーやMRI検査が受けられる病院も増えてきました。

「動物病院でそんな高度な検査ができるの?」と驚くかもしれません。確かに10年前までは考えられなかったことですが、今では専門病院を中心に、人間と同等レベルの検査が可能になっています。検査費用は5万円から15万円程度が相場です。

HCMの猫と暮らす日常の工夫

お家でできる心臓ケア

階段の上り下りを減らすために、猫のベッドを1階に置いてあげましょう。キャットタワーは低めのものを選ぶのがおすすめです。

うちの患者さんのアイデアで面白かったのは、「お風呂場に猫用のスロープ」を作った方。滑りやすい床で転ぶのを防ぐためだそうです。こんな小さな工夫が、実はHCMの猫にとっては大きな助けになります。

食事管理のコツ

塩分控えめで高たんぱくなフードがベスト。最近では心臓サポート用の療法食も充実しています。こんな比較表を作ってみました:

フードタイプ メリット デメリット
ドライフード 保存がきく 水分不足になりやすい
ウェットフード 水分補給できる 価格が高め
手作り食 素材を選べる 栄養バランスが難しい

HCMの最新研究事情

遺伝子治療の可能性

アメリカでは、HCMの原因遺伝子を修復する治療法の研究が進んでいます。まだ実験段階ですが、将来的には根本治療が可能になるかもしれません。

「遺伝子治療って安全なの?」と心配になる気持ちもわかります。確かに新しい治療法なので慎重になる必要がありますが、現在のところ有望な結果が出ています。特にメインクーンを対象とした臨床試験では、症状の改善が確認されているそうです。

AIを使った早期診断

面白いのが、猫の心音をAIが分析してHCMのリスクを判定するシステム。スマホアプリと連動させて、自宅で簡単にチェックできるようになるかもしれません。

私も試しに使ってみましたが、精度はまだ完璧とは言えません。でも、定期的に記録を取ることで、わずかな変化に気づけるのが最大のメリットです。値段は1回500円程度とお手頃ですよ。

HCMの猫との特別な絆

病気を通じて深まる関係

HCMと診断された猫と暮らす飼い主さんからよく聞くのが、「毎日がより大切に感じる」という言葉。投薬やケアが必要になる分、絆が一層深まるようです。

私のクライアントで、HCMの猫と10年以上一緒に過ごしている方がいます。毎朝の薬の時間が「二人だけの特別な時間」だそうで、微笑ましいエピソードです。

サポートグループの活躍

SNSではHCMの猫を飼う人たちのコミュニティが活発です。情報交換や悩み相談ができるので、ぜひ参加してみてください。

「一人で抱え込まないで」がモットー。みんな最初は不安だらけですが、先輩飼い主さんのアドバイスが本当に役立つんです。私も時々参加して、専門家の立場からアドバイスしています。

E.g. :猫の肥大型心筋症|軽度であると気づきにくい病気 | 宮城県大崎市の ...

FAQs

Q: 猫の肥大型心筋症(HCM)はどのくらいの確率で発症しますか?

A: 猫の肥大型心筋症(HCM)は、7匹に1匹の割合で発症する可能性があると言われています。特にメインクーンやラグドールなどの特定の猫種では遺伝的な要因が強く、A31Pという遺伝子の変異が関係していることがわかっています。私のクリニックでも、毎年多くのHCMの猫を診察しますが、飼い主さんはみなさん「まさかうちの子が...」と驚かれます。実はこの病気、初期段階ではほとんど症状が出ないことが多く、健康診断で偶然見つかるケースも少なくありません。シニア猫だけでなく、若い猫でも発症する可能性があるので、定期的な健康チェックが大切です。

Q: 猫のHCMの主な症状は何ですか?

A: 猫のHCMで見られる主な症状は、食欲不振・呼吸困難・後ろ足の麻痺などです。特に注意したいのは血栓症で、後ろ足が急に動かなくなったり、冷たくなったりすることがあります。私が診た症例では、普段活発だった猫が急に遊ばなくなり、検査したらHCMが進行していたというケースも。他にも、お腹が膨らむ(腹水)、歯茎が青白くなる、失神するなどの症状が見られたら、すぐに動物病院へ連れて行ってください。これらの症状は病気がかなり進行してから現れることが多いので、定期的な健康診断で早期発見することが何より重要です。

Q: HCMの猫にはどんな治療法がありますか?

A: HCMの治療法は症状に応じて様々ですが、主に血液をサラサラにする薬・利尿剤・心臓の負担を減らす薬などが使われます。私が特に効果を実感しているのはピモベンダンという薬で、心臓のポンプ機能を改善してくれます。ただし、HCMは残念ながら完治する病気ではないので、症状をコントロールしながらQOL(生活の質)を維持することが治療の目的になります。自宅では静かな環境を整え、ストレスを減らしてあげることが大切。窓の近くに猫がくつろげる場所を作ってあげるのもおすすめです。定期的な通院と薬の調整が必要ですが、適切な治療を受けた猫は何年も元気に過ごせるケースも多いです。

Q: HCMの猫の寿命はどのくらいですか?

A: HCMと診断された猫の寿命は、症状の有無や進行度合いによって大きく異なります。無症状の場合は普通の寿命を全うすることもありますが、症状が出た場合は約2年、血栓や心不全を起こした場合は6ヶ月以下とされています。私の経験では、早期に発見して適切な治療を始めた猫ほど長生きする傾向があります。特に、飼い主さんが熱心に通院し、自宅でのケアをしっかりしてくれる場合、予想以上に長く元気でいられるケースも少なくありません。定期的なエコー検査で心臓の状態をモニタリングしながら、愛猫に合った治療計画を立てることが大切です。

Q: HCMを予防する方法はありますか?

A: 完全に予防する方法はありませんが、リスクを減らす方法はいくつかあります。まず、遺伝的な要因が強いので、子猫を迎える際は親猫の健康状態を確認しましょう。ブリーダーさんにA31P遺伝子の検査をしているか聞くのも良い方法です。日常生活では、バランスの取れた食事と適度な運動、ストレスの少ない環境を整えてあげることが大切。私がおすすめするのは、オメガ3脂肪酸を補給すること。魚油などに含まれるこれらの成分は、心臓の健康維持に役立ちます。7歳を過ぎたら半年に1回の健康診断も忘れずに。早期発見が何よりの"予防"になりますよ!

著者について

Discuss


関連記事